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今回はトレド通りにある美術館、ゼヴァロス‐スティリャーノ宮(Palazzo Zevallos Stigliano)閉館前に行ってみよ
カラヴァッジョ最後の作品と言われる「聖ウルスラの殉教」~Martirio di Sant’Orsola~を展示しているのがナポリのショッピング街トレド通りにある美術館、ゼヴァロス‐スティリャーノ宮(Palazzo Zevallos Stigliano)です。
旧ナポリ銀行(現Intesa Sanpaolo銀行)所有の建築物で、17世紀にナポリを中心に名をはせた建築家コジモ・ファンザゴ(Cosimo Fanzago)が設計を担当しました。
16-18世紀ナポリを統治していたスペイン国の侯爵フアン・デ・セバージョス・イ・ニカストロ、イタリア名ジョヴァンニ・ゼヴァロス(Giovanni Zevallos)の命によるものです。
近くにある現在のスペイン人地区に宮殿を望んでいましたが、建物が密集し建てられなかったため、トレド通りに宮殿を建てました。ゼヴァロスはカンタブリア出身で、ナポリでは重要な商人・銀行家であり、後にナポリ総督府の管理下に入り、いくつかの官職を得て、1639年にオストゥーニ公爵位も取得しました。1647年に起こったイタリアの歴史に残る「マサニエッロの反乱」により宮殿は深刻な被害を受け、追い討ちをかけたゼヴァロスのその後の財政難により、1653年、宮殿は貴族でフランドル人の商人で美術品収集家のヤン・ファン・デン・アインデ(Jan Van den Eynde)に売却されることになりました。アインデはフランドル派の莫大かつ貴重な絵画の数々を収集し(ブリューゲル父、ヴァン・ダイク、ウィッテなど)、一時は宮殿は収集品で埋まっていたと言われていますが、現在それらは世界各国の美術館や個人収集家のもとへ分散しています。
天井画が素敵
アインデの息子フェルディナンドと名家ピッコロミニのオリンダの夫妻の娘であったジョヴァンナが、ソニノ家の王子ドン・ジュリアーノ・コロンナ・ディ・スティーリアーノ(Don Giuliano Colonna di Stigliano)と結婚し、宮殿を譲り受けたため現在の宮殿名となっています。
ただこの政略結婚は長くは続かず、家庭不和にて宮殿内部は解体されその後分割、ルカ・ジョルダーノ(Luca Giordano)が夫妻のために手がけたフレスコ画の連作も消失してしまったそうです。
分割後は貴族や侯爵とは関係の無い富裕層のテナントにバラバラに貸し出された時期もありましたが、1920年に入り当時のイタリア商業銀行が買い取って再びひとつの宮殿となりました。
私はこの建物が好きで、おそらく当時の有力者の住居としては特別大規模な方ではないかと思うのですが、その分大雑把ではなく派手すぎもしないエレガンスを感じます。
エントランスを入るとすぐに、ルイジ・プラタニア(Luigi Platania)による折衷様式の大中央ホールは、ファンザーゴの原案による初期の中庭を利用して作られています。
見事な装飾されたガラスの天窓で覆われています。時々クラシックコンサートも行われるんですよ!
右手にある壮大な階段を上るとIntesa Sanpaolo Groupが所有するイタリア絵画、素描、彫刻など、17-20世紀の120点の美術品が展示されています。ルカ・ジョルダーノ、アルテミシア・ジェンティレスキ、フランチェスコ・デ・ムーラなどの世界的画家をはじめ、20世紀初頭の画家ドメニコ・モレッリや彫刻家ヴィンチェンツォ・ジェミトなどナポリで活躍した芸術家の作品が中心です。
ハイライトはやはりカラヴァッジョの最後の作品と言われる「聖ウルスラの殉教」でしょう。
展示室の一角にある小部屋にひっそりと一点だけ展示されています。
私の好きな芸術家、ナポリ出身のヴィンチェンツォ・ジェミト(Vincenzo Gemito)です。20世紀初頭に活躍しました。こちらに語りかけてくるような彫刻群も好きなんですが、自身の妻などをモデルにした素描が好きです。
こぢんまりとしてとても落ち着く美術館なのですが、現在工事をしているお隣の旧ナポリ銀行本店が3階合計10000㎡の面積を擁する美術館に生まれ変わることになり、こちらの作品は新美術館に移管されることになるようです。大きな美術館ができるのはとても嬉しいのですが、ちょっとだけ残念な気も。
新美術館のオープンは5月21日の予定。これらの作品に加え、古代美術と現代美術もテーマに加わるとのこと。ブログ読者の皆さんはおそらく新美術館をご覧いただくことになるかと思いますが、トレド通り観光の際には新美術館と併せて、素敵なゼヴァロス‐スティリャーノ宮もご覧くださいね!
新美術館はオープン次第ブログにアップします!